2005年1月10日月曜日

【第5回】― コンストラクショニズム④ ―


「なぜレゴは世界一、超天才的なおもちゃなのか?」

世界の人々を魅了したノルウェー発の哲学ファンタジー『ソフィーの世界』(池田香代子訳・NHK出版)。記録的なロングセラー小説となり映画化もされたこの著書の中で著者ヨースタイン・ゴルデルは、レゴを引き合いに出し、紀元前4世紀頃の自然科学者デモクリトスの原子論を説いています。

デモクリトスは、すべては目に見えないほど小さなブロックからできていると考え、この一番小さなブロックを「原子(アトム)」と名づけた。 自然界には無限に多様な原子があり、原子はすべて永遠で、変化せず、分けられない。自然は、原子が組み合わさったり、またばらばらになったりして成り立っている、というのです。

レゴにはこの原子のほとんどすべての性格が備わっており、分けられないし大きさも形もまちまちで頑丈。ありとあらゆる形を作れる。作ったものはばらばらにでき、新しいものをさっきと同じレゴで作れる、とレゴの素晴らしさを紹介しています。

実は教材としてのレゴの素晴らしさの秘密は、作ったものをすぐにばらばらにできる、という点にあるのです。

創造的な行為としての「ものづくり」をテーマにしているのに、「容易に壊せる」ことが長所というのは逆説的に聞こえるかもしれません。しかし、これは前回お話した「推論→実験→検証」という正しい学びのサイクルを実現するためには、教材の特性として不可欠な要素なのです。うまくいかないとき容易にやり直しできなければ、試行錯誤しながら何度も何度もやり直し自分の目指す目標を達成しようという意欲などなくなってしまいます。

木を釘で打ちつけたり、金属を溶接して作ったものを、「うまくいかないからやり直そう」と言っても、大人ならいざ知らず、子供の場合、地獄に突き落とされたように落胆するでしょう。ですから、操作の煩雑さや失敗したときのやり直し(リトライ)のストレスが少なければ少ないほど、子供にとっては優れた教材であると言えます。パパートもデジタルの教材としての良さとして、間違えの箇所をデリートして簡単に直せることを挙げています。ですから、教材は子供の学びを支援する極めて重要な要素なのです。

また紹介する機会もあると思いますが、「ハンズオン算数くらぶ」でも、パターンブロックやキズネール棒、ジオボード、ポリドロンなど、欧米で開発された優れた教材を用い、数学的概念の具体物を通しての学びを実現しています。


To be continue・・・

2005年1月1日土曜日

●2005年 新年のごあいさつ


新年明けましておめでとうございます。昨年は大変お世話になりました。

クリスマス会では、生徒やご家族、スタッフを含め総勢350名が参加いたしました。大きなイベント運営に不慣れなこともあり至らぬところも多々あったかと存じますが、楽しんでいただけたならば幸いです。

昨年末、経済協力開発機構の国際的な学習到達度調査、国際教育到達度評価学会の「国際数学・理科教育動向調査」の結果が相次いで発表されました。前者で は、日本は読解力14位、数学的リテラシー6位。後者では、数学的能力6位、読解力11位、科学的能力2位、問題解決力4位と、文科省も「日本の学力は世 界の最上位とはいえない」と深刻な学力低下を指摘。一方で、全国学力テストの実施や土曜授業の容認といった動きも出てきており、公教育の現場では詰め込み 教育への揺り返しも見られます。

文科省がモデルとするイギリスでは「リーグテーブル」と呼ばれる徹底したテスト主義が行われていますが、「カリキュラム内容を狭めている。生徒にストレス を与えている」と考える教師が8割以上、「学力を向上させる。学習の問題点を見つけるのに役立つ」は1割未満。上記調査でも上位に食い込めない状況です。
一方、テストでのランク付けや競争原理を導入していないフィンランドは、18歳学力世界一、上記の調査でも上位を独占。徹底して自分の頭で考えさせる教 育、結果よりむしろ結果に至る過程を大切にする教育を実践している同国の授業風景が以前TVで紹介されていました。

調査の結果を受け、「物事に興味や問題意識を持ち、原理原則を学び、視点を変えたり、論理的に考える作業が楽しい、面白いと多くの児童生徒が実感できてい ないのだろう。子供の興味、関心、考える力をどう養うかという取り組みを省略すると、学ぶ量が増えても知識を注入する『詰め込み教育』になるだけで、何の 本質的な解決にもならない気がする」とは芳沢光雄東京理科大教授(数学・数学教育)のお話。
当 アカデミーでは、レゴやロボットを用いた科学技術教育、ハンズオン算数といった限られた分野ではありますが、魅力的な教材を使って子供たちの知的好奇心や 探究心を刺激し、公式を覚えて運用する学習ではなく、公式や原理を創造的な活動を通して自らの力で発見する学びの場を提供したいと考えています。昨年もロ ボット・サイエンスコースの「サマーチャレンジ」やハンズオン算数くらぶの「アルゴ大会」など新しい学びの機会を企画しましたが、今年もさらに新たなチャ レンジを行い、もっともっと魅力あふれる教室にしていきたいと存じます。 

本年もよろしくお願いいたします。

To be continue・・・