2006年12月1日金曜日

【第22回】問題解決力とは? ②



― 批判的思考(critical thinking) ―


先月ご紹介したEnnisは30年以上に渡って批判的思考に関わってきた代表的な研究者です。彼は、批判的思考を、「何を信じ何を行うかの決定に焦点を当てた、合理的で省察的な思考」と定義しました。そして、仮説の形成・問題を別の視点から見ること・質問すること・別の解を考えること・計画を立てることなど創造的な思考も含まれるとし、以下のように、14の傾性(態度)と12の能力からなる詳細な「批判的思考/推論カリキュラムの目標」が掲げられています。

【態度】<1>命題や問題を探す<2>理由を探す<3>情報を集めようとする<4>信頼できる情報源を使う<5>全体の状況を考慮に入れる<6>中心点から離れない<7>基本的な関心を忘れない<8>他の選択肢を探す<9>オープンマインドでいる<10>証拠と理由が十分であれば、その立場に立つ<11>題が許す限りの正確さを求める<12>複雑な全体を秩序だって扱う<13>自分が持っている批判的思考技能を使う<14>他人の感性・知識レベル・洗練さの程度に敏感である

【能力】<最初に明らかにすること>①問題に焦点を当てる②議論を分析する③明らかにするための、または挑戦するための質問をし、答える<基本的サポート>④情報源の信頼性を評価する⑤観察し、その結果を判断する<推論>⑥演繹的推論を行い、判断する⑦帰納的推論を行い、判断する⑧価値判断を行い、判断する<更に明確化する>⑨用語を定義し、定義を判断する⑩仮定を明らかにする<戦略>⑪行動を決める⑫他人と相互作用する

また、彼は入門書において、FRISCOアプローチを提案しています。これはFocus, Reasons, Inference, Situation, Clarity, Overviewの頭文字を取ったもので、これらの点を押さえることにより遺漏なく批判的思考を行えるようにするチェックリストとなっています。

<F>現在の問題が何であるか、焦点を当てて明確化すること(議論を分析することとも言える) <R>情報を集め、理由を明らかにすること(ここでは情報源の信頼性などが検討される) <I>手持ちの情報から決定にいたる推論のステップを検討すること(演繹や帰納など論理学的な知識を使用。特に仮定を同定し他の選択肢を探すことが重要) <S>状況を理解すること(状況は理的環境も社会的環境も含む。状況には、人・歴史・知識・感情・偏見・集団・興味などがある) <C>使われている言葉の意味を明確にすること <O>概観することであり、これまでの意志決定プロセス(FRISC)を繰り返し行うこと

もともと、この批判的思考は、1930年代にアメリカの教育界で社会科と国語科で主張され、60年代に教育の現代化というスローガンと共に脚光を浴びたものの、70年代には基礎学力重視の声にかき消され、80年代に入って基礎学力の中に位置づけれられて再登場したという経緯があります。しかし、今日では子供のみならず大人も、民主的な社会の責任ある市民の教育のために不可欠なツールとして教育・経済・医療・政治などあらゆる分野で求められています。
現在の日本では、未だに基礎学力=読み書き・計算といった捉え方が基本にあり、基礎学力重視・受験型知識偏重主義が日増しに声を大きくしています。教師や大人の教えたことを鵜呑みにする教育がどこまで続いていくのでしょう?そして、子供たちは、いつ、どこで、批判的思考を身に付けたらよいのでしょうか?

【参考】批判的思考の諸概念
~人はそれを何だと考えているか?~(道田泰司)
http://www.cc.u-ryukyu.ac.jp/%7Emichita/works/kiyo0109/kiyo0109.html
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2006年11月1日水曜日

【第21回】問題解決力とは?①


 
― 批判的思考(critical thinking) ―

問題解決力とは何か?を定義することは非常に難しいことです。しかし、問題を解決するために必要な能力や姿勢に関しては様々な議論や提案があり、その中の一つに「クリティカルシンキング」という言葉をよく聞きます。子供に批判的思考なんて求めると、小生意気な子になってしまうのでは?と思われがちですが、OECDのPISA(学力到達度調査)が示す学力観にもこの言葉が出てきます(トゥルースの視線・第12回参照)。

批判的思考の定義や構成する要素・能力・技能に関しては研究者によって様々です。教育界では「問題解決学習」を唱えたジョン・デューイが、「How We Think」の中でrefrective thinking(省察的思考)という言葉を用い、以下のように述べています。
 『判断を遅らせること、健康な懐疑主義を持ち続けること、そして心の公平さをたしなむことに重点を置き、また、あらゆる信念、または、知識とされるものを、それらの基盤となることに照らし合わせ、活動的、継続的、かつ注意深い考察を行い、その考察が 導き出す結論に至ること』そして、省察的思考の5つの側面として、<1>暗示 <2>困難の知性化(問題設定) <3>仮説の構成(観察などの操作を開始するため) <4>推論(仮説の精密化) <5>行動による仮説の検証 を挙げています。

また、「何を信じ何を行うかの決定に焦点を当てた、合理的で省察的な思考」(Ennis)、「ある知識や人間の関心事の領域の中で、技術をもって思考の目的を追い求める、訓練された、論理的、自発的な思考」(Paul)などの定義をする学者もいます。

ここで、ほとんど共通しているのは、単に知的領域だけにとどまらず、情意的、意思的に含んだものだということです。
高校の必修科目で揺れる昨今、入試だけを目標にした教育現状が浮き彫りになりました。そして、是非はともあれ、「ゆとり教育」の目指した理念をいとも簡単に捨て、より従来の知識注入型の教育に急速に回帰しようとしているような気がします。「批判的思考」を育てる教育が日本では可能なのでしょうか?次回、さらにこのテーマでお話したいと思います。

【参考】Webサイト「Hooked on Education」(by Mutsumi May Sagawa)


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2006年10月1日日曜日

【第20回】新世代Mindstorms NXT、いよいよ日本上陸!


―Mindstormsは進化しているか?―
10月5日(木)「教育用レゴマインドストームズNXT」が発売となりました(本体のみ。プログラムソフトは10月末~11月初発売)。

これまで、ロボットの心臓部は「RCX」と呼ばれるコンピュータを搭載した黄色いレゴブロック、プログラムソフトは「ROBOLAB(ロボラボ) 」が使用されてきました。新製品では、心臓部は白い色の「NXT」となり、プログラムソフトは「教育用NXTソフトウェアver1.0」と「ROBOLABver2.9」の2種類が使用できます。

NXTで作ったロボットのモデルは格好よく、モーターやセンサーの性能も向上し、RCXに比べロボット製作キットとして特化した感があります。しかし、良いことばかりではありません。NXTやセンサーにはポッチがなくブロックが付かないので、ビームやスローアームをペグなどのジョイントで固定していきます。ですので、ブロックを付け足しながら形を考えて作るというより、予め設計のイメージを持って作ることになります。これは、レゴの部品やメカニズムについて、より高度な知識と熟練が要求されることを意味します。現在、ロボット・サイエンス コースは小3生から受講可能ですが、いずれ年齢を上げることも考えなければならないかもしれません。
また、モーターやセンサーが大きいので、ロボカップジュニアなどサイズ制限がある競技会での使用にも不安があります。 ソフト面にも、まだ、不便なところがあるようです。既習者にはROBOLAB2.9の方がやりやすく感じるでしょう。プログラムレベルに関しても初心者には難しく、上級者には物足りない面があるかもしれません。

しかし、まだ誕生したばかりの製品なので、今後改良が加えられ、さらに進化してくれると信じています。
当アカデミーでもNXTへの移行には慎重に考えながら、ある程度の期間を経て混乱のないようにしたいと考えており、移行措置に関しては年内に発表する予定です。

なお、年内か年明けに特別講座を開いてカリキュラムを早期に確立し、当アカデミーに在籍している生徒に、いち早く、充実した内容の指導を実現していくつもりです。ROBOLAB教育のパイオニアとして活動してきました当アカデミーは、その経験と実績を十二分に活かして、今後もパイオニアとして活躍したいと思っています。ご期待ください。
 
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2006年7月1日土曜日

【第19回】ロボカップ2006ブレーメン世界大会


-世界大会関東遠征チーム-

去る6月13日(木)~18日(日)、ドイツ・ブレーメンでロボカップ2006世界大会が行われました。日本代表としてジュニア18チームが選抜され、内9チームが関東(都立高専3チーム・当アカデミー3チーム含)と圧倒的な数を占めました。しかし残念ながら2チームが辞退。関東7チームでブレーメン入りを果たしました。

ブレーメンは「音楽隊」で有名なドイツ北部の都市ですが、街の中心は市庁舎(世界遺産)周辺の狭い範囲だけで、こじんまりとした治安もよい街です。会場は中央駅近くのMesse Bremen。何棟にもなる大きな会場の全面で行われ、大ステージや休憩所だけでなく、教材を含むロボット関連の企業ブースも多数ありました。

ジュニアは世界23カ国から247チームが参加。開催国ドイツと中国のチーム数が非常に多かったようです。ダンスは1日、休息日がありましたが、サッカー・レスキューは連日試合。さらにWelcomeパーティーやSocial Event,Outdoor Event,Farewell Partyも夜7時頃から催され、スケジュール的にはハードな面もありました。

サッカーとレスキューは、ドリームチーム方式が採られました。異なる国のチームが組んで競技する方式ですが、レスキューに関しては賛否両論が分かれました。中・高校生では自主的な活動を行っており、ある程度英語(会場では英語が公用語)での交流が可能ですが、小学生はまだ先生や親の力を借りて活動しているチームが多い上、特に日本・中国などのアジアの子供達は自分たちだけで英語のコミュニケーションをとることが困難です。高学年では、「自分のロボットは今調子が悪い。君達のチーム成績が良くなるために何が出来るだろうか?」というパートナーチームを思いやる交流もあったようです。一方で、勝ちにこだわり過ぎる指導者のチームも。競技中にパートナーのロボットの状態が悪いと、減点を押さえるためフィールドからの撤去を要求したり、パートナーのロボットやPCを勝手に触り出すチームさえありました。

ダンスは予選演技が2回あったので、1回失敗しても挽回できます。ロボットの仕組みやプログラムを調査する「インタビュー」でも日本語スタッフを配置。また、決勝に8チーム選出されましたが、ベスト3は順位を付けずに3チームとも優勝。残り5チーム全てに、カテゴリー賞が与えられました。教育という観点に立脚し、子供たちの気持ちを考えた配慮ある運営でした。

ジャパンオープンや世界大会という上位大会になるにつれ、いつも気になるのは「私たち大人の関わり方」です。だんだん欲が出てくるのか、活動している子供よりも真剣にロボットやプログラムを直したり、言動の指示をしたり姿が時折見られます。
教育の目的は、子供たちが一人の独立した人間として、その人生を責任と自信を持って生きていけるように育てることです。勉強にせよ、スポーツにせよ、ロボット製作にせよ、そのための練習です。大人のとるべき態度は、子供の力を信じてじっと見守ること。大人にとっては非常に辛く忍耐の要ることですが、大人が自分を信頼し温かく見守っているという安心感の中で、子供は生起する問題を自分で解決する力を身に付けていくのではないでしょうか? ロボカップジュニアの精神を実現できる環境を私たち大人が協力して創っていければと願います。

今後ともご協力お願いいたします。

7.5.3.大切なのは「勝ち負け」ではなく、ロボカップジュニアの活動や経験を通して「いかに多くのことを学んだか」ということである
―ロボカップジュニア2006サッカー・ルール7.5「精神」より ―
会場前にて 関東出場チーム
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2006年6月1日木曜日

【第18回】2006上海国際幼児教育展


- 上海教育事情見聞録 -

去る6月1日(木)~3日(金)、上海市の中心部に位置し同市のシンボル的な建物である「上海展示中心」=写真=にて『2006上海国際幼児教育展』が開催されました。当アカデミーでは、小学生以上の教材・教育アイテムはかなり充実してきましたが、幼稚園生を対象にした教材に関しては、良質のもので当アカデミーの教育コンセプトに合うものがなかなか見つからないのが実情です。そこで、アジア各国から幼稚園生向けの教材が多く集まる展示会が開催されると聞き、早速出向いてみました。

多くの観覧者が見守る中、40名の幼稚園生たちの楽団による中国伝統音楽の演奏から、いよいよ開場。教育関係者やマスコミだけでなく一般市民も大勢来ていました。上海は、超現代と戦前の栄華と貧困が入り混じり、なんとも異様な光景を持つ街(オリンピックを控えて大規模な工事があちこちで行われ、超高層ビルの建設ラッシュ!)。会場に来ている一般市民は、かなりの富裕層ではないでしょうか、衣服もきちんとしています。

一般市民の関心は、英語教育と算数教育に集中していました。中国は外来語は何でも漢字にしてしまうよう。例えば、マクドナルドは「麦当労」、ケンタッキーは「肯徳基」、サントリーは「三得利」など。そのせいか、市民はほとんど英語が分かりません。やはり、我が子が国際人となるには英語が必要であることを真剣に考えているようで、日本での初期の英語熱に似たものを感じます。算数の教材はかなり多く、モンテッソーリ教育も教材を出展していましたが、ここでも算数教材に大変力を注いでいました。

また、LEGO educationのブースもあり、大盛況でした=写真=。扱っているアイテム数は日本より多く、教育市場での関心も日本よりも高いのでは?と感じました。ただ、展示会全体としては、規模も期待より大きくはなく、残念ながら魅力的な教材と出会うことができませんでした。

滞在中の一日、「上海科技博物館」を訪問。日本科学未来館をさらに大規模にしたような科学館です。あらゆる科学分野の展示があり、一日ではほんの一部しか回れませんでした。やはり、メインは有人飛行を成功させた宇宙のブース。ロボットは日本とは比べ物にならないくらい遅れています。3つあるIMAXシアターの一つでは、LEGO RACERのアニメを4D(3次元映像+風や水や座席が動いたりといった感覚に訴える仕掛け)で上映しており、これは迫力があってなかなか面白かったです。

国際的に大規模な教材展として有名なのは、香港とニュルンベルグの展示会、NSTAという全米の理科の先生向けの教材展です。今回の出張では成果は得られませんでしたが、時間の許す限り新たな良質な教材との出会いを求め続けたいと思っています。

 
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2006年5月1日月曜日

【第17回】ロボカップジャパンオープン2006北九州ジュニア部門に参加して


-トゥルース北九州遠征チーム-

ジャパンオープンに、当アカデミーから計7チーム22名が参加。生徒と家族・スタッフを含め55名の大選手団(写真)。

3日、羽田から2便に分かれて北九州へ。大型チャーターバスでホテルに入り、夕食を取りながら壮行会。各生徒が決意を表明し、ご父母の皆様から激励のお言葉を頂きました。関東の代表として参加できなかった人の分まで頑張りたいと、生徒達が大きく成長してくれたことを感じ、ご父母の皆様からは当アカデミーへの感謝のお言葉を頂き、胸が熱くなってしまいました。

4日はロボット調整日。ホテルの日本庭園を見ながら朝食を取り、モノレールに乗って会場へ。ダンスチームは、ほぼステージ上を独占して入念に調整。サッカー・レスキューでは地域の異なる2チームが1つのチームを結成するマルチチーム方式を採用しているので、初対面のパートナーチームと交流しながら調整に余念がありません。

いよいよ5日はサッカー・レスキューの予選。サッカーは、鉄板で覆われた大型重量マシンが上位を独占。レゴでは、全国で日吉の1チームだけが決勝進出を果たしました。将来人間とサッカーをすることを目標にするロボカップの理念はどうなるのだろう、という疑問を禁じえません。

レスキューでは、ビデオカメラやデジカメが並び、オートフォーカスのための赤外線のせいか、動きが完全に狂ってしまう場面も多々見られ、新たな運営上の問題が提起されました。マルチチームでは競技中故障ロボットの修理を手伝ったり、自チームの成績を犠牲にしてもパートナーチームを助けたり、協力関係を築いてほしいという運営側の意図はある程度達成されたと思います。

6日、ダンス本番。3チームとも懸命な努力が実り85~90%の出来。演技が終わるごとに、これまでの皆の苦労が思い出され、目頭が熱くなりました。表彰式で入賞した皆の顔は自信と誇りで輝いていました。敗退チームも多くのことを学び、悔しさを胸に、この経験を必ず活かしてれると信じています。皆、本当に良く頑張りました。前向きに懸命に生きることの大切さを教えてくれて、ありがとう。
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2006年4月1日土曜日

【第16回】GEMS(ジェムズ)②


-科学とは?-

ジャパンGEMSセンター代表・古川和氏は、GEMSの特徴を以下のように紹介しています。

1)GEMSの内容は、科学教育すべてを網羅している。科学的探究能力と理解が問題を解決する上で重要である。モデルを作ったり科学者の疑似体験したりして、専門家がどのような科学的方法で調査を行っているかを学ぶ。
2)問題解決のための話し合いを行う。学習者自身が答えを見つけるためのプロセス重視をしている。協力を重んじ、グループで意思決定や調査を行う。
3)グローバルな問題を扱い、だれもがどこでもできるように作られている。指導者と学習者が共に学び、各指導者が身のまわりや地域の問題に当てはめながら、GEMSの学習を実社会に応用していく。
4)ディベート、ロールプレイ、ゲームなど多彩な学習方法で、特にプログラムの導入部分に力を入れ、好奇心をそそる内容にしている。


「学びのデザイン」という観点からは、まず、上記4)の導入部分は大切です。いかに、知的好奇心や探究心を刺激できるか?が、活動全体の成功失敗を決めます。

春休みに行った「シャボン玉フェスティバル」では、様々な方法で色々なシャボン玉を作りながら、徐々に自然に子供たちはシャボン玉を観察し始め、表面を虹色の模様が流れる様子や、シャボン玉の内部は温かいこと、割れる瞬間は色が変わることなどを発見していました。そして、シャボン玉同士が接している面は平面になっていることを発見するところから、算数の学習が本格的に始まる、という導入です。子供たちは完全にシャボン玉のとりこになり、投げかける問題に対して真剣に取り組み、発見する喜びをもっともっと味わおうとします。ですから、小学1 ~3 年生が高学年で学ぶ空間図形に対しても、我先に発見したり創造したり、活発に活動する姿は、さすがに仕掛人の私共も予想以上の反応に驚いたほどでまた、それらの立体を大好きなシャボン玉で作ろうというのですから、子供たちにとってはたまらなく魅力的な創作活動です。

今後、リトル・ダ・ヴィンチでは、前述のGEMSの特徴を活かした講座を逐次行っていきます。ご期待ください。
科学とは疑問をもつことである
科学とは調べることである
科学とは協力である
科学とは世界を理解するためのものである

『GEMSハンドブック』より

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2006年3月1日水曜日

【第15回】GEMS(ジェムズ)①


~Great Exlploration in Math and Science 数学と科学の偉大な冒険~

既にお知らせしました『リトル・ダ・ヴィンチ』では、カリフォルニア州立大学バークレー校ローレンスホール科学教育研究所で25年以上にわたり研究・開発された教育プログラムの一つ『GEMS』を導入いたします。これは、直接体験型(ハンズオン)の理数教育カリキュラムです。

ローレンスホール(Laurence Hall of Science)は、サンフランシスコの近く、バークレー校の広大な敷地の中にあり、豊かな自然と静かな環境に恵まれたところです。最上階にサイエンスミュージアム、下のフロアには生物ラボ、コンピュータラボ、プラネタリウム、劇場、数学・化学・物理・天文などの講義室があり、脳研究の展示なども行われているそうです。年間50万人以上の人々が訪れて科学に親しんだり、指導者研修に参加しているとのこと。ローレンスホールで開発された数多くのカリキュラムのうち、生物学の野外体験型プログラム「OBIS」や「SAVI]」「FOSS」などが日本にも紹介されています。

GEMSには、幼稚園生から高校1年生までを対象とする80冊以上の指導者ガイドがあり、1冊のガイドを完成させるには3年かかります。地質学や生物学、天文学など様々な科学や数学分野の大学教員とカリキュラムディベロッパー(専門の開発者)が協力して作成したものを実際に全米の学校で使用し、その結果をフィードバックして改良を加えながら完成させていくからです。どんな子にも科学が面白いものだと実感され、科学一般に対する前向きな姿勢や創造的思考プロセスを養えるよう考案されています。
GEMSのアクティビティは、「コンストラクショニズム」に基づき、生徒自らが発見していくというプロセスを体験するというものです 。まず行動することから始め、生徒たちがユニットで扱う事柄になじんで、ある程度自分の考えを持ち、疑問を持って初めてコンセプトについて話し合いを始めます。そして、どうやって調べたらよいか、結論を導き出していくかを考えながら、科学的なコンセプトやプロセススキルを学び取るのです。あくまでその過程で、カリキュラムの構成(学びのデザイン)に基づいて、教師が有効な触媒となり生徒たちの自力による発見を導きます。この役割から教師は「facilitator(ファシリテーター:促進者)」と呼ばれ、その教授法は「guided discovery(ガイディッド・ディスカバリー)」と名付けられています。

当アカデミーは、GEMSについて興味を持ち、研究してきましたが、今年2月「ジャパンGEMSセンター(代表・古川和氏)」より正式な指導者資格を取得、開講を可能としました。

前号でお知らせしました、『リトル・ダ・ヴィンチ 小さな数学者』の春休み講座「カエルの算数Part1」「シャボン玉フェスティバルPart1」に続き、『リトル・ダ・ヴィンチ 小さな科学者』オープニング講座「ウーブレック」(科学者は何をする人なの?)を4月に企画しています。ご期待下さい。

▲GEMS[プレート・テクニクス」より
溶岩の粘性と流れる速度・面積の実験

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2006年2月1日水曜日

【第14回】新コース『リトル・ダヴィンチ』始動


新しい科学教育への挑戦

前回の「新年のご挨拶」でも少し触れましたが、2006年度授業より新しいコースを始動します。コース名は『リトル・ダ・ヴィンチ』。「人類史上最も偉大な天才」とも「真理を追い求めた知の巨人」とも称され、芸術から科学まで、あらゆる分野に圧倒的に卓越した才能を発揮したダ・ヴィンチ。子供は皆、科学者であり、芸術家として生まれてきます。誰もが皆、知的好奇心や探究心を十分に持った「小さなダ・ヴィンチ」なのです。その資質を十分開花させたいと願い、『リトル・ダ・ヴィンチ』と名づけました。

『リトル・ダ・ヴィンチ』は、レゴ以外の教材・素材を用いて科学するコースです。テーマによって、算数実験を中心に行う「小さな数学者」、理科実験を行う「小さな科学者」、ロボット製作を行う「小さなロボットエンジニア」などの細分化した講座を設ける予定です。「コンストラクショニズム」「オープンエンド」「ハンズオン」という教育手法を最大限に活かし、科学・数学の基本的概念を理解するだけではなく、どのように調べれば正しい結果が得られるか?調べた結果からどのように結論を導き出すか?という、科学者が実際に行なう研究手法(科学的プロセス・スキル)を身に付けることに重点を置きたいと考えています。

現在、カリフォルニア州立大学バークレー校ローレンス科学教育研究所で25年以上にわたり研究・開発された教育
応を起こす物質を特定する方法を考えたり、巨大なシャボン玉を飛ばして色々な観点から計測したり、宇宙から来たという不思議な物質を調査したり、地球温暖化や海流について実験しながらそのメカニズムや社会的問題を考えたりハンズオンを通して探究心を育み、創造的思考プロセスに働きかける科学と数学の活動を創出していきます。この活動にデータロガーなどのITを組み合わせることにより、最先端の科学教育が可能になると考えております。

通年や学期単位の講座に加え、科学工作的な単発の講座も時折入れていく予定。また、将来的には、デジタルに関する講座も加えていければと存じます。詳細が決まりましたら、逐次お知らせしたいと存じます。ご期待下さい。
尚、別項でも説明しておりますが、「ハンズオン算数くらぶ」は、この『リトル・ダ・ヴィンチ』の「小さな数学者」という講座に組み入れますので、その旨ご了解下さい。


科学とは、喜びに満ちた探求の無限なる航海である
-ウォルト・ホイットマン-
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2006年1月1日日曜日

●2006年 新年のごあいさつ~満5歳・新たな飛躍に向けて


新年明けましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。

昨年末のクリスマス会は、生徒・ご家族470名、スタッフ40名以上の盛大な会となりました。なお、今回は都立高専の先生方や学生の皆様にもお力を貸して 頂き、「創造性と問題解決力を育てる新しい教育」を通じて心ある人々の輪が広がっていくのを大変嬉しく感じました。ご父母の皆様を始め協力してくださった 方々に、この場をお借りして御礼申し上げます。

さて、当アカデミーが「LEGOとロボットで学ぶ科学教室」(旧:レゴダクタ教育システム導入教室)を開校したのが2000年10月、満5歳となりました。日本でも先駆けのLEGO教室として、開校当初は社会の理解はほとんど得られなかったことを考えると、認知度も少しずつ高まってきた現在の状況には隔世の感があります。これもひとえに、ご父母の皆様のご理解とご協力の賜物と感謝申し上げます。

この5年間、全コースのオリジナル授業案の完備、RISE科学教育研究会の立ち上げ、「サマーチャレンジ」や「X'masチャレンジ」などのオリジナル・ ロボットコンテストの企画運営、日本発の「ROBOLABサマーキャンプ」の開催、ロボカップジュニアの活動・運営協力など活発に活動してまいりました が、6年目に入った現在、さらなる飛躍に向けて新たなチャレンジを行っていきたいと考えています。

まず、従来の「ジュニアロボティクス」を「ジュニアエンジニアリング・ベーシック」(2年カリキュラム) と改称し、LEGO新教材「メカニカル・エンジニアリング=写真=」を使用して「ジュニアエンジニアリング・アドバンス」(1年カリキュラム)を設置しま す。ベーシックでは実際の様々な機械をテーマに力学的な基礎原理とその応用を理論的・体系的に学びます。アドバンスでは生産システムをテーマに、より高度 な物理学・機械工学について、専門家が実際に行っている研究・問題解決・立案の科学的手法を通して学びます。

また、これは来年度以降になるかもしれませんが、「ジュニアエンジニアリング・マスター」(1年カリキュラム)を新設予定。エネルギーを学ぶLEGO教材 「e-Lab(イーラボ)」とロボット教材「ROBOLAB( ロボラボ)」のインベスティゲータ機能(データの収集・分析・解析)を組み合わせた新たな試みを行う予定です。これらの教材については、世界の教育現場で このところ急速に授業事例の報告が増えていますので、ぜひ日本でもいち早く実現していきたいと考えております。

次に、理科実験教室が注目される昨今、従来のたった一つの正解に至るための予定調和的な実験ではなく、当アカデミーの教育理念である「コンストラクショニ ズム」「ハンズオンラーニング」「オープンエンドアプローチ」を実現しうる理科実験の講座を新設する予定です。科学館などで行っている単発のイベント的な 講習会ではなく、理論的・体系的に科学的なものの考え方やアプローチの仕方を学べる講座にしたいと鋭意研究中ですので、ご期待下さい。また、幼稚園生対象 の自然教室も将来的に実現したいと思っております。

さらに、小学校低学年向け、また、上級者向けのロボット製作短期講座やロボットサイエンスコース受講者対象のメカニズム通信講座などを計画中です。これら 新コース・新講座に関しましては、授業実施可能な状態になりましたら順次お知らせいたします。

TIMSS2003調査(国際数学・理科教育動向調査)という国際的な学力検査では、アジア各国のレベルアップが目立ちました。中学2年生の理科では、1 位シンガポール、2位台湾、3位韓国、4位香港。日本は6位です。また、小学4年生理科でも1位シンガポール、2位台湾、3位日本。日本は前回1995年 調査から中2は4位から、小4は2位からの転落です。学力のみならず、学習意欲・動機付けの面で国際平均値よりかなり低いのが気になるところです。シンガ ポーールでは、これまで推進してきたIT教育5ヵ年計画に加え、「Teach less, Learn more」という標語が政府から発表されました。これまでの詰め込み教育から脱皮し、①自主学習意欲を奮起させるきっかけ作り②科学への興味を引き上げる 工夫③楽しんで学習できる場の創出④自らの能力を引き出す手助けとなる教材・教授法・アクティビティの開発などを柱とした教育指針を示したのです。まさに これは当アカデミーの教育方針と合致していると言えるのではないでしょうか。

日本の子供たちにも世界レベルの教育を享受してもらいたい、そして、日本のみならず世界の将来を担う人物に育ってほしいという、当アカデミーの願いを一歩 一歩着実に実現してまいりたいと存じますので、今後ともご指導、ご鞭撻の程よろしくお願いいたします。
▲先月24日の
クリスマスパーティー
▲メカニカル・エンジニアリングを使った授業風景
▲e-Labのセットで
作った風車

 
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