2006年11月1日水曜日

【第21回】問題解決力とは?①


 
― 批判的思考(critical thinking) ―

問題解決力とは何か?を定義することは非常に難しいことです。しかし、問題を解決するために必要な能力や姿勢に関しては様々な議論や提案があり、その中の一つに「クリティカルシンキング」という言葉をよく聞きます。子供に批判的思考なんて求めると、小生意気な子になってしまうのでは?と思われがちですが、OECDのPISA(学力到達度調査)が示す学力観にもこの言葉が出てきます(トゥルースの視線・第12回参照)。

批判的思考の定義や構成する要素・能力・技能に関しては研究者によって様々です。教育界では「問題解決学習」を唱えたジョン・デューイが、「How We Think」の中でrefrective thinking(省察的思考)という言葉を用い、以下のように述べています。
 『判断を遅らせること、健康な懐疑主義を持ち続けること、そして心の公平さをたしなむことに重点を置き、また、あらゆる信念、または、知識とされるものを、それらの基盤となることに照らし合わせ、活動的、継続的、かつ注意深い考察を行い、その考察が 導き出す結論に至ること』そして、省察的思考の5つの側面として、<1>暗示 <2>困難の知性化(問題設定) <3>仮説の構成(観察などの操作を開始するため) <4>推論(仮説の精密化) <5>行動による仮説の検証 を挙げています。

また、「何を信じ何を行うかの決定に焦点を当てた、合理的で省察的な思考」(Ennis)、「ある知識や人間の関心事の領域の中で、技術をもって思考の目的を追い求める、訓練された、論理的、自発的な思考」(Paul)などの定義をする学者もいます。

ここで、ほとんど共通しているのは、単に知的領域だけにとどまらず、情意的、意思的に含んだものだということです。
高校の必修科目で揺れる昨今、入試だけを目標にした教育現状が浮き彫りになりました。そして、是非はともあれ、「ゆとり教育」の目指した理念をいとも簡単に捨て、より従来の知識注入型の教育に急速に回帰しようとしているような気がします。「批判的思考」を育てる教育が日本では可能なのでしょうか?次回、さらにこのテーマでお話したいと思います。

【参考】Webサイト「Hooked on Education」(by Mutsumi May Sagawa)


To be continue・・・