2007年11月1日木曜日

【第30回】生のための学校 「フォルケホイスコーレ」②

―民衆の自発的な教育のイニシアティブ―

前回お話したラ・クールが教鞭をとり、グルントヴィよって提唱された「フォルケホイスコーレ」は、これまで英国やドイツを模範的としてきた日本の教育では考えられないほどの自由度を持っています。現在デンマークに100校前後あり、ノルウェー約80校・スウェーデン約120校、フィンランド約90校、英国・ドイツ・米国・東欧諸国・インド、ナイジェリアやケニアなどアフリカ諸国、日本など全世界で様々な展開をしています。各校それぞれ特色があり一括りで定義できない点もありますが共通点は以下のようになります。

・ 満17歳以上ならば、国籍・年齢・性別・障害の有無を問わず入学できる
・ 試験は絶対にせず、単位や資格の付与もない
・ 教師と学生が寮で共同生活をする
・ 書物よりも対話を中心に、生そのものを学び、社会性を自覚する
・ 授業科目に決まったものはなくカリキュラムは自由
・ 教師はアドバイスを与えるのみで、学生の自主的なグループ学習が中心
・ 政府の補助は受けるが、国家から一切の干渉を受けない私立学校
・ 規模は数十名の学校が主流
・ 学期は短期2ヶ月~長期8ヶ月までいろいろあり、好きに選択できる
・ 技術や知識の取得に主眼があるのではなく、あくまで授業や討論・実践・実習・生活を通して自己発見し、これから生きる自分の道を探すことに力点が置かれる

フォルケホイスコーレは、世界の成人教育・社会教育のモデルとされていますが、日本での教養・趣味のイメージとは異なり、社会との関わりが極めて深いのが特徴で、国の歴史や政治の流れとは切っても切れない関係があります。風車発電は昨今の代表的な例ですが、地域運動・地域づくり・教育・再生エネルギー・途上国援助といった分野では、見習うべき点がたくさんあります。

また、幼稚園、小学校(フリースコーレ)、中学校(エフタスコーレ:全寮制)、さらに上位の「教員養成大学」や学位なども取得可能な「フォルケアカデミー」といった独自の教育体系を持っています。私立学校でありながら、公教育の教育内容もフォルケホイスコーレを模範にし、変革させるくらいの力がある存在なのです。
次回から数回に渡り、フォルケホイスコーレの特徴的な活動や、グルントヴィの思想、小中学校の教育について、ご紹介させていただきます。

【参考】『生のための学校』(清水満著:新評論)

To be continue・・・