2009年10月1日木曜日

【第46回】森を育てるという生き方②


― 高尾山の森林 ―

RISE科学教育研究会では、一昨年より「サマーキャンプ」の開催場所を高尾に移し、昨年より自然観察の専門家の案内で高尾山の登山を活動の一つとして取り入れています。高尾山は、ご存知のように旅行ガイド「ミシュラン・ボワイヤ・プラティック・ジャポン」で山としては富士山の他、唯一日本の山として三ツ星を獲得しました。首都圏から日帰りで気軽に行けることもあり、年間110万人(07年) が訪れ、最近では外国人の観光客も多く見受けられます。私も「サマーキャンプ」やその打合せ、また個人的にも年に数回は登っていますが、決して飽きることない魅力的な山です。

魅力の一つとして、その自然の豊かさ、生物の種類の多さが挙げられます。高尾山を代表する鳥「ブッポウソウ」(仏法僧)そしてキビタキ、アカショウビン、イカル、サンコウチョウ、オオルリ、クロツグミなどの鳥類が150種類(日本全体では550種類ですので、その3分の一近くが生息しています)。これまでに確認された植物の数は1321種類(イギリスでは全土で自生する植物は1623種類なので、それに相当する植物の数が高尾山だけで見られます)で、高尾山に固有のもの(タカオワニグチソウ、タカオスミレ等)が60種以上も確認されているそうです。昆虫にいたっては、渡りをする蝶「アサギマダラ」を始め、なんと5000種を越えます。また、日没後はムササビの滑空も見られます。

この自然豊かな高尾山も、「サマーキャンプ」の案内人である高尾ビジターセンターの伴さんによると、大昔は野原で植林によって森林が作られたそうです。744年聖武天皇の勅命を受けた行基が薬王院を開山した高尾山は、戦国時代に北条氏照が竹林伐採禁止の制令を出し、江戸時代に入ると幕府は山林保護や植林を積極的に行いました。明治になると高尾山全域を帝室御料林に(1889)、そして明治の森高尾国定公園に指定(1967) 。第二次世間大戦中は海軍の船材として、戦後の物資が不足していた時代には建築用材として多くの木々が切り出されましたが、東京都高尾陣馬自然公園(1950)、国定公園(1967)に指定され再び保護を受けるようになったそうです。

そのため、高尾山の森林は主として3種の原生的な自然林と人工林に分類されます。自然林は北西側の冷温帯樹林(落葉広葉樹林ブナ、イヌブナなど) 、南東側の温暖帯樹林(常葉広葉樹カシ類)、稜線に集中しているモミ林です。昨年のキャンプでは『デジタルで探れ!森が教える時間と記憶』がテーマだったので、これらの森林の違いや森の一生を伴さんの案内と解説で学びました。

高尾山は人が守り育てた森林なのです。決して自然に作られた森林ではありません。大切に育てた結果、都会の近くにありながらも多くの生物が生息する豊かな森となり、人間との共存も可能とした一つの証として、「ミシュラン三ツ星」という栄冠を手にしたのではないでしょうか?

1号路から6号路までの自然研究路があり、それぞれにテーマが設けられているので、テーマごとに観察しながら散策してみてはいかがでしょうか?また、子供の足には少しきついかもしれませんが、夏に陣馬山まで歩いてみると実に様々昆虫と出会い、私でも童心に戻り興奮してしまうくらいです。


To be continue・・・