2011年1月1日土曜日

●2011年 新年のご挨拶にかえて ~「対話」から生まれる新しい学び~

明けまして、おめでとうございます。

昨年は、ロボカップジュニアでは4チーム(卒業生含む)が世界大会進出、レスキュー(プライマリ)で世界チャンピオン誕生、ダンスでプレゼンテーション賞受賞など、生徒たちが大活躍をしてくれた1年でした。これも生徒やご父母の皆様たちが当アカデミーの理念と目標をご理解くださり、ご協力くださった賜物と感謝しております。本当にありがとうございます。

国際的な学力の目標である第4回「国際的な学習到達度調査・PISA」(09年実施)の結果が昨年12月に発表されました。初めて都市として参加した上海が1位を独占。香港・韓国と上位がアジア勢が占めています。日本は、前回06年と比べ、科学的リテラシーが6位→5位、数学的リテラシーが10位→9位、読解力が15位→8位と少し上向きになり、長期低落傾向にやっと歯止めがかかったようです。

今年4月から小学校では新学習指導要領が全面実施されます。ゆとり教育の授業時間数よりも6年間で278時間増え、教科書も04年検定と比べ25%ページ数が増えます。一部教育関係者の中には「詰め込み教育に戻ってしまうのではないか」「暗記や暗唱が中心の教育に戻したり授業時間を増やしたりする方法では日本の教育が抱えている課題は解決できない」という声もあります。


朝日新聞では元旦から1面トップで特集『教育 あしたへ』を連日掲載しています。初回『答えは対話の中に』では、唯一の「正解」を求める時代は終わり、教師の「教え込み」から子ども同士の「対話」を目指す、小さな白熱教室を紹介。今各国が目指しているのは、子どもの多様な意見を吸い上げ、その場でどんどん流れを変え、子供同士で対話させる授業であり、「上海などアジアの都市部では、国の施策として子ども主体のコミュニケーション教育をしている。日本も、互いに考えを響き合わせ、共同で創造する授業に転換すべきだ」と、佐藤学(東大大学院教授)は『対話』の重要性を説いています。

ノーベル化学賞を受賞した根岸英一氏は「国際レベルの切磋琢磨が必要。そのためには、ディスカッションができ世界と戦える若者を育てること。Competition(競争)は我々から最高のものを引き出す要素であり、正しい意味でのCompetitionはいくらでも必要である」(NHKスペシャル)と、ハーバード白熱教室を紹介した中原淳氏(東大淳教授) は「(日本の学生に)対話させてみると論理矛盾が多く議論がかみ合わない。世界レベルで議論し、コラボレーションできる教育が必要だ」(朝日新聞) と提言しています。

当アカデミーでは2000年よりレゴ(R) ブロックとロボットを教材とした科学技術教育を行っていますが、この教育の生みの親シーモア・パパート(マサチューセッツ工科大学メディアラボ名誉教授) が提唱する教育論「コンストラクショニズム」に基づいた授業を実践しています。この理論では、「教育は決して知識を与えることではなく、子どもたちが自らの活動を通して自分の力で知識を獲得し構築できるよう、学びをデザインする」ことが求められます。また、授業運営では、「先生対生徒ではなく、生徒同士が互いに意見を交換し合い刺激し合うというコラボレーションの中で知恵や知識を高めていく。生徒の発見と気づきを積み上げて目標に到達する」という方法を採っています。まさに「対話」の授業であり、これを算数や科学教育に応用したのが『リトル・ダヴィンチ』です。

現在の日本は政治的にも経済的にも閉塞感に満ちている感があります。長引くデフレ、少子高齢化と人口減、政府債務の累積…現在の日本が置かれている状況は過去の教科書に書かれていないものばかり。7年間宇宙を旅して帰還した「はやぶさ」のプロジェクトリーダー川口淳一郎氏は「イノベーション(技術革新)も考え方が青天井でないと出てこない。新しい発想をしたいのなら少し背伸びをして目線を変えることが大事です。本や論文で過去のことを読むだけでは自己規制しているのと同じで、イノベーションは生まれない」(朝日新聞)と。

暗記や暗唱を中心とした教育では、これらの難問を解決する力をつけることが出来ません。現実の問題や起こりうる問題に対して、学んで身につけた知識や得た情報をどのように活用して、その問題を解決するかという活用力、問題解決力、批判的思考(クリティカル・シンキング) 、コミュニケーション能力、忍耐、自信といった教科の枠を横断した能力、すなわちPISAが求める学力(CCC:クロス・カリキュラム・コンピタンス) が要求されているのです。これらはまさにロボカップジュニアや宇宙エレベーターの大会だけでなく、日頃の授業の「問題解決学習」や「卒業制作」でも実践している内容です。

昨今の教育に関する議論や科学者たちの言葉を耳にする度に、新しい教育の創出を使命としてきた私共としては、方向性が正しかったという確信を強めております。ご賛同いただいている皆様のご期待に応えるべく、世界に通用する学力を育成するという目標に向かって、さらに全力で突き進んで行きたいと決意を新たにしている次第です。

本年もよろしくお願いいたします。

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳

危機感を持ちながら夢を追う生き方が好きだ。非常に高い夢を持っているかどうか?そこに向かって努力することは誰でもできるし、意義あることだと思う
― 根岸英一 ―


To be continue・・・