2012年12月8日土曜日

【第74回】 日本のICT教育の現状


~ 教育のガラパゴス化の不安はないか? ~

「海外の数学 電卓は当然  日本は手計算重視」という記事が、10/18朝日新聞に載っていました。教科書研究センターが行った算数・数学の教科書に関する国際比較調査結果を紹介する記事です。調査の対象は、主要国と経済開発機構(OECD)による学習到達度調査(PISA)での上位国を含め11カ国。報告書によると、ほとんどの国の教科書で、電卓やパソコンの表計算、作図ソフトなどのデジタル機器を使った内容が頻繁に登場しているのに比べ、日本の教科書ではデジタル機器の扱いがほとんどなかったとのこと。

記事では調査に加わった長崎栄三教授(静岡大大学院教育学研究科)の言葉を載せています。「デジタル機器をうまく使えば、作図や計算の労力は最小限にして、考えることに集中できる。日本もデジタル機器の活用をもっと考えてもいいのではないか」と。

PISA2009では、19カ国を対象に『デジタル読解力』の調査が試験的に導入されました。
「情報へのアクセス・取り出し」では、複数のナビゲーション・ツールを利用して、多くのページを横断しながら特定のウェブページにたどり着き、特定の情報を見つけ出す技能が求められます。「統合・解釈」では、リンクを選択しテキストを収集・理解するプロセスにおいて、テキストの重要な側面を読み手自身が構築する必要があります。「熟考・評価」では、情報の出所や信頼性、正確さを吟味・判断しなければなりせん。

この結果はとても興味深いものです。
■すべての国で、女子が男子よりも得点が高い。
■読書活動が活発になるほど、デジタル読解力の平均点が高い。
■自宅にコンピュータがあり、利用している生徒の方が得点が高い。
■「メールを読む」「ネット上でチャットをする」ことは、デジタル読解力と関連性がない。

日本は4位でした。日本の特徴は以下のように指摘されています。
●上位と下位の人数が少ない。
●家庭の経済状況や教育環境の違いが読解力に影響する程度が他の国と比べて小さい。
●国語、数学、理科のいずれの授業でもコンピュータを使用していないという生徒の割合が、参加国中もっとも多かった。
●「表計算ソフトを使ってグラフをつくることができる」は、回答した17国中12位。
●「マルチメディア作品を作ることができる」の割合はもっとも少なかった。

以前にも紹介いたしましたが、教材の展示会を見ると海外と日本の教育現場における現状には隔世の差があります(視線49回50回参照)。教育現場にICT教育を急がないと、教育のガラパゴス化を招き、日本の子どもたちが世界から取り残されてしまうのではないか?という不安はぬぐえません。


【参考文献】
OECD生徒の学力到達度調査 2009年デジタル読解力調査~国際結果の概要
(文部科学省国立教育政策研究所)