2013年10月22日火曜日

トゥルースの視線【81回】

ICT夢コンテスト受賞「NESTロボコン」の思想②
-学び合う、学びを支援する-

■NESTロボコンの成果

参加者は、活動地域や年齢が異なるだけではなく、まだプログラミングを学んで半年に満たない者から、ロボカップ世界大会の出場者や優勝者までいた。そのため、学年差・経験差が大きな者同士でチームを組む場合も多かった。そのような中で、初対面の者同士が、チームとして競技で良い成績を出すために協力せざるをない状況を作り出すことができた。お互いにコミュニケーションをとり、チームワークを良くする努力をしなければならない。自分のロボットやプログラムを紹介し合い、チームとしてどのような戦略を採るかを話し合っていた。また、年長者や経験が豊富な者は、年少者が分からなかったりつまずいていたりする箇所を積極的に教えていた。また、チーム間の交流もあり、チームを超えて学び合う場面も頻繁に見られた。たった一日の活動ではあったが、多くのことを学び取ると同時に、多くの友達を作ったようである。

加えて、主審の補助役である副審として競技の運営に携わることにより、コンテストを運営してくれている人々の苦労を知り、感謝の気持ちも芽生えたようである。また、正しい運営を実現するために、大人と子供が真剣に意思疎通を図り、自然に協力し合っていた。

一方、運営に参加して下さった先生や父母は、子供たちが真剣に夢中で取り組んでいる姿に間近で接することにより、彼らの熱心さを十分感じとり、子供たちの活動をより深く理解し、さらに支援していきたいという気持ちが強まったようである。

当アカデミーの教育方針は「社会的構成主義」という教育理論(視線第67回参照)を主軸にし、実践しています。教師による一方的な知識の教授ではなく、子供たちが自らの活動を通して自分の力で知識を獲得し構築していくこと。そして、自分一人ではできないことでも、お友達や先輩、教師との関わりの中で、意見を交換したり刺激し合ったり、そのコラボレーションの過程で、自分の力で達成していくことが社会的構成主義の教育方法です。これは、知識や情報の活用力を求める世界標準の「PISA型学力」(視線12回参照)の育成に最も有効とされる方法です。私たち教師が行うべきことは、教えることではなく、目標課題を設定し、学びをデザインし、活発に頭脳の交流が行われる環境を整えることに他なりません。

ロボカップジュニアやFLLは世界共通の課題です。参加している中学生の中には、英語で書かれたセンサーの専門的な説明書を辞書を引きながら理解しようとしていたり、プログラミングに必要となる三角関数や微分・積分などの考え方も学んだりしている子もいます。試験のためとか受験のためとかいった、他から押し付けられた学びではありません。自分が目標を達成するために必要なことを自主的に学ぶ「内発的な学び」が可能になるのです。これは「好きこそものの上手なれ」と言うように、楽しいからこそ実現できる学びでもあります。

特にロボカップジュニアの競技会場では、子供たちの活動エリアへの大人の立ち入りは厳禁、ロボットに触れることもプログラムを教えることも禁止されています。子供たちはスケジュール管理を含め自主的かつ自立的に活動し、生起する問題を自分たちで解決しなければなりません。これは一朝一夕にはできませんので、日頃から鍛えておく必要があります。また、子供たちが自分の力で物事にチャレンジするには、絶対的な安心感が必要です。大人たちが、子供たちの活動を理解し、(直接教えたり指示したりするのではなく)陰に陽に支援することによって、その安心感は生まれます。大人は、子供をとことん信頼する勇気を持たなければならないのかもしれません。

NESTロボコンは年に1回、1日だけの活動ですが、当アカデミーの授業では継続的に長期間にわたる指導により、子供たちに学ぶ楽しさ、考える楽しさ、目標達成できた喜びを十分実感してもらい、自信とプライドを持って物事に取り組めるようになってほしいと願っています。
 
 
トゥルース・アカデミー代表 中島 晃芳



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