2018年12月15日土曜日

トゥルースの視線【第135回】

ぶんかサイエンスカフェ市民講座
~ AI・ロボットの時代を生き抜く力 ~

去る10/27(土)練馬区役所20階交流会場にて、当アカデミー代表の中島が科学技術教育ネットワーク(NEST)理事として講演を行いました。主催は「ぶんかサイエンスカフェ」(代表:伊藤規志子氏)。生活に役立つ情報提供、文化・科学研究や実践成果を発展的に学び合う異文化を学習することを通して、練馬の市民を元気にすることを目的としている市民団体です。

OECD教育・スキル局長アンドレアス・シュライヒャー「すべての知識はGoogleにある」「今の子どもたちが大人になったときは、65%の職業が今ない職業にとって代わっているだろう」、英オックスフォード大学マイケル A.オズボーン准教授「1020年後に、日本の労働人口の約49%が就いている職業において、AI(人工知能)やロボットに代替することが可能」という時代に、今の子供たちは生きていかなければなりません。「学習とは、人がコミュニティに参加して、そこでのアイデンティティを確立する過程であり、その過程で人の『できること』が変化することである」という、フィンランドを学力世界一に導いた「社会的構成主義」をいかに実現するか?国際的な学力調査PISAに示される「OECDキーコンピテンシー」や国際団体ATC21sが示した「21世紀型スキル」を紹介し、NESTの活動を紹介しながら、この21世紀に求められる教育について語りました。

OECDのキーコンピテンシー」の大項目は、① 社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する能力(個人と社会との相互関係)②多様な社会グループにおける人間関係形成能力 (自己と他者との相互関係)③自律的に行動する能力 (個人の自律性と主体性)であり、これは「21世型スキル」や、オズボーン准教授が説く「AIやロボットによる自動化が難しい職業の3つの特徴」①創造的思考②ソーシャルインテリジェンス(社会的知性)③非定型にも相通じるところが多々あります。 

これらの能力を実現する教育的手法として、Activity Based Learning (子供たちの活動をベースにした学習)・Project Based Learning (プロジェクト型学習・問題解決型学習)Future Oriented Education(未来志向の教育)が教育界で現在求められています。その実現には、チームとしてのプロジェクト学習と位置付けられているロボットコンテストを目指す学習活動が有効であることを説きました。ロボットコンテストの意義として、●工学的な知識・科学技術・数学の実践的活用・プログラミング技術●設計力・デザイン力●PDCAサイクルによる企画・開発力●創造力・問題解決力・戦略的思考・クリティカルシンキング(批判的思考)●コミュニケーション能力・チームワーク形成力●プレゼンテーション能力●グローバル・コンピテンシー、などが挙げられます。

早稲田大学公共政策研究所の招聘研究員であり、一般社団法人「途中塾」の代表理事である羽田智恵子氏も聴講しに来て下さり、講演後の懇親会でたっぷり意見交換をさせていただきました、「途中塾」というのは、早稲田大学大学院の修了生12名が、同院の客員教授だったジャーナリスト筑紫哲也氏を塾長に開講した勉強会で、「未来志向の若者に斬新な発想の機会を提供し、引力のある『場』を創出する」ことを理念としていたとのこと。2008年、筑紫氏没後いったん閉鎖となったが、2012年寺子屋流に仮開講。童門冬二氏(作家)や加藤登紀子氏(歌手)を始め幅広い分野から発起人が集まり、2014年本格開塾したそうです。また、教育を目指す高校生からも進路や学習すべき内容についての質問をたくさん受けました。

人の輪が広がって、NESTTruthの目指す教育の共感者や協力者が増えているのを強く感じる講演会でした。


トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳


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2018年11月29日木曜日

トゥルースの視線【第134回】

World Robot Summit 2018東京プレ大会
~ 人とロボットが共生し、協働する社会の実現に向けて- ~


「World Robot Summit」(WRS)は、経済産業省とNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が主催。国際的なロボットの競技会(World Robot Challenge : WRC)と展示会(World Robot Expo:WRE)で構成されます。第1回となる本大会は2020年に愛知県(10月)と福島県(8月インフラ・災害対応カテゴリーの一部競技)で開催されます。それに先駆けて、去る10/17(水)~21(日)にプレ大会「World Robot Summit 2018」が東京ビッグサイトで行われました。

WRC(競技会)は、大きく分けて「ものづくり」「サービス」「インフラ・災害対応」「ジュニア」の4カテゴリーあります。フィールドが大きくて目を引いたのが「インフラ・災害対応」。「プラント災害予防」「トンネル事故災害対応・復旧」「災害対応標準性能評価」の3チャレンジがあり、かなり実践的な研究を行っていることを目の当たりにしました。「ものづくり」の製品組立チャレンジは、メーカーの技術開発が進み、かなり精度が高まってきた気がします。見て楽しかったのは「サービス」。「パートナーロボット」と「フューチャーコンビニエンスストア」の2チャレンジがあり、前者は家庭における片づけをテーマにして、実際にロボットが動く「リアルスペース」とVRを使った「バーチャルスペース」の2競技がありました。後者は、コンビニでの商品陳列やトイレ掃除などに挑戦。現実空間で動くロボットについては、ロボットが人間の作業を代行するにはまだまだ克服しなければならない難しさがあると実感しました。


そして、やはり最大の関心は「ジュニア」です。日本チームの他、ベトナム、タイ、マレーシア、オーストラリア、オランダ、アメリカからの出場。「スクールロボット」と「ホームロボット」の2チャレンジが用意されています。前者は今ではすっかりおなじみのロボット「Pepper(ペッパー)」を使用して、ロボットがいる学校を想定し、学校生活の向上に役立つロボットのプログラミングを考えるというものです。Pepperは数日前から使用することができます。後者は、人とロボットが協力しながら生活する家庭を想定したロボット製作・プログラミングを目的とします。こちらはどんなロボットを使ってもよく、1チーム2台まで出場できます。どちらのチャレンジも、いくつかの決められた課題に挑戦する「スキルチャレンジ(30%)」と「オープンデモンストレーション(50%」「テクニカルインタビュー(20%)」の合計点で競います。残念ながら連日訪問することはできず、私が訪れたのはオープンデモンストレーションの日でした。緊張しながらも審査員の前でデモンストレーションを行っている子供たちの姿は頼もしいものでした。新しい挑戦を見るとワクワクと心躍るものです。2020年の第1回大会にはTruthの生徒たちにもぜひ参加してもらいたい、と強く感じました。
 
 WRE(展示会)は「Japan Robot Week2018」と同時開催だったため、多くの企業が参加。ヤマハの倒れないバイクやオムロンの卓球するロボットは人気がありました。「第8回ロボット大賞」の展示も行われ、来場者も多くとても活気がありました。東京ビッグサイト別会場では、「ブロックチェーン2018」や「ビジネスAI2018」も開催されており、まさに人口知能(AI)とロボットの時代に生きていることを痛感しました。

 今回のWRCはロボカップを運営している方々が多く、中心となって運営に当たっていました。2020愛知大会は、ロボカップ・アジア・パシフィック大会(RCAP)と同時開催。当然、大人のメジャーだけでなく、ジュニアの競技も全競技行われることになります。WRCとRCAP。大人部門もジュニア部門も同時に2つの大会となるので、東京オリンピックだけでなく、想像するだけでワクワクする年になりそうです。

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳


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ロボットサイエンス
ロボットマスター

2018年10月13日土曜日

トゥルースの視線【第133回】

AIは人間を超えられるのか?(2)
日本の子どもたちはAIに勝てるか?

 前回に引き続き、国立情報学研究所教授、同社会共有知研究センター長、一般社団法人教育のための科学研究所代表理事・所長の新井紀子氏著「AI vs教科書が読めない子どもたち」の内容を簡単にご紹介いたします。まず、なぜ東ロボくんが東大受験を断念したか?それは、AIの限界を証明したからです。

 「真の意味でのAI」が人間と同等の知識を得るには、私たちの脳が意識無意識を問わず認識していることをすべて計算可能な数式に置き換えることができることが大前提になります。しかし、数学が4000年の歴史をかけて発見した数学の言葉のすべては、「論理」「確率」「統計」の3つに限られています。AIといえどもコンピューターは計算機であり、できることは基本的に四則演算だけ、しかも使っているのは足し算とかけ算のみ。数学には「意味」を記述する方法がない。だから、AIには意味を理解する仕組みが入っているわけではなく、あくまで「あたかも意味を理解しているフリ」をしているに過ぎないのです。

 「2016年度第1回東大入試プレ」で、東ロボくんは数学では偏差値76.2を記録したものの、150億もの英文を暗記した英語の偏差値は50.5、国語に至っては49.7にしかならず、東大の挑戦権を得るには遠く及びませんでした。ディープラーニングの限界を証明したことは、東ロボくんプロジェクトがもつ意義ではあります。しかし、多くのホワイトカラーの職がAIに奪われるという予想が現実のものとなることをも示唆しました。1学年の数は約100万人、その半分の50万人がセンター試験を受験し、東大君がその上位20%に入りました。東ロボ君に負けた80万の子供たちに明るい未来が提供できるのか?という疑問を新井教授は抱きました。

 2013年にオックスフォード大学の研究チームが発表した10~20年後に残る職業の共通点は、高度な読解力と常識、加えて人間らしい柔軟な判断が要求される分野で、AIが不得意な分野と一致します。新井教授は、それまで誰も疑問を持たなかった「誰もが教科書の記述は理解できるはず」という授業の前提に疑問を持ち、全国25,000人を対象に、独自で開発をした「基礎的読解力調査(リーディングスキルテスト:RST)」を実施。AIが80%程度の精度を持つ「照応(主述・修飾被修飾の関係)」「係り受け(指示語)」に加え、AIにはできそうもない「同義文判定(2つの文を読み比べて意味が同じであるかを判定)」「推論(生活体験や常識から意味を理解する能力)」「イメージ同定(文章と図やグラフを比べて内容が一致しているかどうかを認識する能力)」「具体例同定(定義を読んでそれと合致する具体例を認識する能力)」を加えた6つの観点から作成しました。

 その結果は、「照応」の正答率が中学生6割・高校生7割、「係り受け」は中学生7割弱・高校生8割弱で意味を理解できないAI並み。「同義文判定」中学生6割弱・高校生7割、「イメージ同定」1~2割・高校生3割前後でした。鉛筆を転がして選択肢を選ぶ程度のランダムさしか示していない結果もあります。PISA読解力2015年世界8位の日本ですが、移民の少ない国で日本語を母国語として育つ子供の割合が極めて高いにも関わらず、3人に1人が教科書を読めない(内容理解を伴わない表層的な読解もできない)子供がいるのは、なぜか?これでは、AIに職を奪われても仕方ありません。

新井氏がこの読解能力調査で分かったことは、
・高校の偏差値との相関は高い
・中学では向上するが、高校では向上していない
・家庭の経済状況とは逆になる
・通塾や読書の好き嫌い、科目の不得意、スマホの利用時間、学習時間とは無関係など。

 私たちも読解力の低下は何となく感じていましたが、理数の能力はとても優れているのに、問題の文章が正しく読み取れていないために正答することができない場面が気になっておりました。リトルダヴィンチ理数教室では問題文を正しく読み取る練習として9月から「算数・数学思考力検定」の過去問を扱う授業を加えたのは、このような背景があるからです。新井教授の研究は進んでいくと思いますが、私共教育に携わる者として、真剣に向き合って考えなければない重要な問題だと思います。

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳


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2018年9月1日土曜日

トゥルースの視線【第132回】

AIは人間を超えられるのか?(1)
~ AIが東大合格に挑戦(1) ~

 自動車の自動運転、「考える家電」や「宇宙天気予報」など毎日のようにAI(人工知能)という言葉が話題に上ります。AIを利用したビジネスも盛んに興っており、AIが私たちの生活を豊かにしてくれるという新しい希望を与えてくれています。一方、AI研究の権威レイ・カーツワイル博士が提唱した、少なくとも2045年までには人間と人工知能の能力が逆転するという「シンギュラリティ(技術特異点)」が問題となっています。宇宙物理学者(故)スティーブン・ホーキングやビル・ゲイツのみならず世界を代表する人工知能の研究機関も、AIに潜む危険性について指摘をしています。また、「10~20年以内に日本の労働者の約49%の仕事が、ロボットや人工知能の発達により代替できるようになる、単純労働だけでなく専門性などを必要とする職業も機械が行うだろう」(野村総合研究所)のように、AIやロボットに人間の職業が奪われていく可能性もかなり現実のものとなってきています(視線106回)。

 国立情報学研究所教授・新井紀子教授をプロジェクトリーダーとして、「東ロボくん」と名付けられた「AIが東京大学を受験して合格できるか?」という、とても興味深く壮大な実験が行われました。この実験の目的は、AIにはどこまでのことができるようになって、どうしてもできないことは何かを解明し、AIに仕事を奪われないためには人間がどのような能力を持たなければならないかを明らかにするというものです。

 初めて受験した2013年は偏差値45(代々木ゼミナール第1回全国センター模試)だった東ロボくんは、2016年には偏差値57.1(進研模試総合学力マーク試験)まで上昇。国公立23大学30学部53学科と4年制私立大学512大学1343学部2993学科で合格可能性80%の判定。これは、MARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)や関関同立(関西・関西学院・同志社・立命館)という難関私立の一部学科も含まれるレベルだそうです。さらに東大2次試験に備えて数学と世界史の2科目だけですが、記述式問題に挑戦。駿台予備校の2015/2016第1回東大入試実践模試の世界史600字の論文では偏差値61.8、代々木ゼミナールの2016年度第1回東大入試プレの数学(理系)では偏差値76.2で全受験生のトップ1%に入る成績をマーク。2016年には東ロボくんは身体を持ち、ロボットアームで記述式問題ではペンを持って解答を書くことができるようになったそうです(その様子はTED‐http://digitalcast.jp/v/25858/ で見られます)。しかし、2016年11月に東京大学合格は実現不可能であり、断念したことを発表しました。

 数学者である新井教授は、AIはまだどこにも存在しない、シンギュラリティは来ない、という立場をとっています。人工知能というからには、人間の一般的な知能と少なくとも同等レベルの能力のある知能でなければならない、しかし基本的にコンピューターがしているのは計算であり、四則演算に過ぎない、と。AIが人間と同等の知能を得るには、人間の脳が意識無意識にかかわらず認識していることをすべて計算可能な数式に置き換えることが不可欠ですが、私たちの認識をすべて数式に置き換えることはできません。それが今言われているAIの限界なのです。

 しかし、安心はしていられません。教授は2010年に『コンピューターが仕事を奪う』で警鐘を鳴らしています。前述野村総合研究所のレポートのように、今後10年から20年の間に働く人の半数が職を奪われるかもしれない、50%のホワイトカラーがこの短期間で減ってしまうというとてつもない事態が起こると。これからの時代を生き抜くためにはどんな能力が必要か?そのヒントを東ロボくんのプロジェクトが教えてくれています。次回はその内容をご紹介したいと思います。


参考文献:『AI vs.教科書が読めない子どもたち』新井紀子著(東洋経済新聞社)


トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳

トゥルース・アカデミー
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2018年7月31日火曜日

トゥルースの視線【第131回】

ここが違う!TruthのSTEM教育④
理論・カリキュラム・実践の三位一体による高い実績


 当アカデミーは、2000年から教育用レゴブロックを教材とした科学技術教育、2001年からロボットを教材としたロボット製作・プログラミング教育、2008年らScratchなどを使用したプログラミング教育を行ってきたパイオニアとして知られています。いわゆる今はやりの「STEM教育(科学・技術・工学・数学の教育分野の総称)」の先駆けです。当時はロボット製作やプログラミングの教室はほとんど皆無であり、世間からはまだまだ玩具、お遊び程度に思われていた時代です。

 しかし、昨今はロボット教室やプログラミング教室が全盛の時代。そんな中、今年のロボットサイエンス体験会で初めて次のようなご質問を受けました。「ロボット教室はたくさんありますが、この教室は他と何が違うのですか?」と。改めて何が違うのかをまとめてみました。

1)根底として、プログラミング教育・ロボット教育の元祖、マサチューセッツ工科大学メディアラボのシーモア・パパート元名誉教授が唱える「コンストラクショニズム」という教育理論に基づく教育を実践。教育関係者からは「理論と実践が完璧に一致している」と高い評価を受けています。

2)実践に基づいたオリジナルのカリキュラム・授業案に対する信頼が高いこと。教師用の指導書として出版され、学校の先生を始め多くの指導者が活用していたり、科学館や行政機関、学校での授業提供も15年以上継続して行ったりしています。国立教育政策研究所の論文でも、私共の指導書に基づいた実践事例が紹介されています。

3)初心者から上級者まで学習できる豊富なカリキュラムを提供。ブロックサイエンスでは小2~3年生からレゴ社WeDoを使用してプログラムを学びます。ロボットサイエンスではレゴマインドストームEV3から始まり、ロボットの自作・センサー製作、C言語によるプログラミング、Arduinoを使ったロボット製作やプログラミング等、小学生から高校生まで学べる内容を用意しています。

4)教室の授業での指導は、当アカデミーの卒業生を中心に、国際的なロボットコンテスト「ロボカップジュニア」でジャパンオープン(全国大会)に何度も出場したり世界大会に出場したりして、現役時代(19歳以下)に活躍したOBが担当しています。彼らのロボット製作やプログラミングの思想や技術、考え方の文化が伝承される環境を用意しています。

5)ロボットコンテストを「これまでの学習の発表の場、広い地域からの人々との交流による学びの場」と捉え、積極的に参加しています。ロボカップジュニアでは、2004年からほぼ毎年日本代表として世界大会に参加し世界チャンピオンも輩出している、最も実績ある団体です。また、宇宙エレベーターロボット競技会で一昨年は小学生部門1位と3位、昨年は準優賞。FLLジュニアでも、モデルデザイン賞を受賞。今年から参加を始めた、米国発祥の国際的なロボコン「RoboRAVE」では、当アカデミーも属するNPO法人科学技術教育ネットワーク(NEST)が東日本大会の運営を依頼され、東日本での普及を図っています。

 また、NESTでは、現在世界的に科学教育に必要とされる「制御」と「データロギング」をテーマに、「NESTロボコン」や「ロボットの鉄人」「ICTサイエンスキャンプ」などを毎年行い、ICTを活用した教育実践事例のコンテスト「ICT夢コンテスト」で3年連続CEC奨励賞を受賞。教育の質の高さが評価されています。

 この17年間パイオニアとして日本のSTEM教育をリードしてきましたが、時代が私たちに追いついた今、さらなる魅力ある先進的な教育を提供していきたいと存じます。Truthの新たなチャレンジをご期待下さい。

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳


トゥルース・アカデミー ブロック・サイエンス
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トゥルース・アカデミー リトル・ダヴィンチ理数教室
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トゥルース・アカデミー ロボット・サイエンス
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2018年6月30日土曜日

トゥルースの視線【第130回】

ここが違う!TruthのSTEM教育③
数学者のように、科学者のように考える

2000年からレゴ(R)エデュケーションのブロック教材やロボット教材を使ったSTEM教育を実践して来ましたが、当時はほとんど理解を得られないという状況でもあり、この教育の根底にある教育理論「コンストラクショニズム」(視線128回:http://truth-shisen.blogspot.com/2018/04.html参照)を教科の学習に活かせないか?と考え、2005年より「ハンズオン算数くらぶ」を開講。翌2006年に「リトル・ダヴィンチ」と名称を変え、現在の「リトル・ダヴィンチ理数教室」へと受け継がれています。

国際的な学力調査OECD生徒の学習到達度調査(PISA)、国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)では、最近は少しずつ改善されてきていますが、「算数・数学、理科が楽しい」という日本の小中学生の割合が、国際平均を大きく下回っていることが長らく指摘されてきました。私共もそれまで進学塾を運営し子供たちの受験を応援してきましたが、算数・数学や理科の学習において公式を教え込み、出された問題にそれをいかに適用していくかを訓練していることに違和感を覚え、「なぜ?」という疑問に焦点が当てられる教育ができないかと模索を始めました。

そこで出合ったのが、坪田耕三氏(青山学院大学教育人間科学部教授/元筑波大学附属小学校教諭)が提唱し実践している「ハンズオン・マス」(手を使った体験的な算数活動)、滝川洋二氏(東海大学教育開発研究所教授・理科教育カリキュラム研究者)が理事長を務める「ガリレオ工房」や左巻健男氏(法政大学教職課程センター教授・新理科教育フォーラム代表・雑誌『理科の探検』編集長)を始めとする新しい理科実験の提案、カリフォルニア大学バークレー校ローレンスホール科学研究所で開発されている幼稚園から高校生を対象とした科学・数学領域の参加体験型プログラム「GEMS(ジェムズ:Great Explorationsin Mathand Science)」、アメリカの環境教育プログラム「Project Wild」などの直接体験型の理数教育でした。

その後さまざまな教材を研究し、厳選した教材と受験指導の経験とを加味して、できる限り効果的な算数・科学活動が実践できるようにオリジナルのカリキュラムを積み上げてきたのが、リトル・ダヴィンチ理数教室なのです。学校の算数では小学校低学年は数量が中心になりますが、リトル・ダヴィンチ理数教室では数量と平面図形、立体図形の3分野を扱い、数量と図形の融合も図ります。規則性あるものを美しく感じる心をはぐくみ、数学者が行ったような探求を通して、自ら公式を生み出せる力を養成することを主眼としています。また、科学も観察する習慣を身につけることから始まり、電気回路やデータロギング(実験データの収集と分析)などを通して、科学する態度を育てていきます。

「教師中心の授業」から「学習者中心の学び」へと教育に求めるものが転換している現在、教育には「何を教えるか」ではなく、「何をどのように学ぶのか?そして、何ができるようになるのか?」が求められているのです。また、現在大人気のプログラミング学習環境「Scratch(スクラッチ)」も2008年より算数の授業に取り組んでおり、昨年度よりダヴィンチ・キッズ(年長対象)からのすべてのステップでプログラミング学習を行っています。

ICT技術の発達により、教育ツールも大きな変革期を迎えています。リトル・ダヴィンチ理数教室のカリキュラムは、子供たちの知的好奇心と探求心を刺激する、新しい教育ツールを導入しながら進化を続けていくつもりです。今後もご期待ください。

ふしぎだと思うこと これが科学の芽です
よく観察してたしかめ そして考えること
これが科学の茎です
そうして最後になぞがとける
これが科学の花です
-朝永振一郎-

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳


リトル・ダヴィンチ理数教室
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2018年5月26日土曜日

トゥルースの視線【第129回】

ここが違う!TruthのSTEM教育②
ー 教材が持つ可能性を最大限に引き出す授業 ー




 ブロック・サイエンスでは、レゴエデュケーション®の教材を使用しています。2000年10月から日本における第1期のレゴ教室としてSTEM教育をスタートし、マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボのカリキュラムをベースに、今の日本の子供たちに必要な教育とは何か?を日々模索しながら独自カリキュラムを開発してきました。その結果、ブロック・サイエンスには、3つの大きな特徴が挙げられるようになりました。

 特徴の1つは「問題解決学習」。具体的には、「困っている人・動物がいるので、その人・動物の問題を解決するための物を各ステップで使用しているブロック教材で作ろう」という課題です。①提示された絵の中にどのような問題があるかを発見する②解決策を考える(解決のための推論を立てる)③問題解決のためのオリジナルの作品を作る(試行錯誤しながらの創作活動)④なぜそれを作ったのか、どのような工夫をしたのかを発表する(プレゼンテーション)⑤実験によって問題が解決したかを検証する(作品の評価)、という流れ。これは、ブロックビルダーⅠ(年少)から導入を図り、ブロックビルダーⅡ(年中)では野生動物園を舞台に様々な動物が抱える問題を解決。ブロックビルダーⅢ(年長)以降では、「基礎理論のための実験→それを利用した現実社会に存在するモデルの研究→問題解決学習」という流れで行います。問題解決学習では調べ学習も行いますので、それまで学んだ知識や技術と、調べた情報とを基に問題を解決する、という正にPISAのいう「リテラシー」(知識や情報の活用力)を育成するのには極めて有効と考えています。



 2つ目の特徴は、キッズクリエーター(小1・2)以降、ステップが上がるにつれて「物理」が明確なテーマになっていくことです。様々なモデル研究を通して、機械力学の基礎の基礎をハンズオン学習で直接体験しながら学んでいきます。ジュニアエンジニア(小3~小6)やジュニアインベンター(小5~中1)では、中学理科で扱う「仕事とエネルギー」の概念を常に意識しながら学習を進めます。特にジュニアインベンターでは、空気圧や太陽光や風力エネルギーと仕事の関係を扱っています。だんだん研究室のような雰囲気になってきます。とある公立高校で同教材を使用したところ、これまでペーパーでしか学んでこなかった高校生たちは、「あ、こういうことか!」と大喜びしていました。Truthに通う子供たちは、理論に先立ち、楽しい思い出と共に実体験の引き出しをいっぱい作っているので、成長して理論を学んだ時にどこからでも引き出すことができます。各種ロボットコンテストで高い実績を挙げ、一流大学理系に進む卒業生が多いのは、この幼い頃からの実体験のためでしょう。


 3つ目は、「デジタルとの融合」。今はプログラミング教育全盛時代となりましたが、21世紀の理科教育に必要なものは「制御(プログラミング)」と「データロギング(実験データを取ること)」であると、ここ数年言われています。キッズクリエータⅡ(小2・3)からプログラミングによる制御が始まりますが、ジュニアエンジニアで
は各単元の最後にマインドストーム®を用いて、センサーを使った自動制御やデータロギングを行っています。自動ドアやコインの選別機を作ったり、振り子の等時性を調べたりといった活動です。さらに、ジュニアインベンターでは、プログラミングによる制御とデータロギングを同時に行い、データによってプログラミングを修正するといった活動も行います。例えば、ソーラーパネルの動きを制御し、効率よく発電するにはどのような動きをプログラムすればいいのか?発電量の変化をグラフで読み取って、効率が悪いところはどう修正すればいいか?など。


 教育力の圧倒的な差が、生徒たちが長く通ってくれて、対外的にも大きな実績を残し、卒業しても末永く付き合いが続く、大きな一因になっていると確信しています。Truthの教育に共感し信頼して下さっている子供たちや保護者の皆様の期待に、どこまでも応え続けたいと思っております。

トゥルース・アカデミー 代表 中島晃芳

トゥルース・アカデミー
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2018年4月20日金曜日

トゥルースの視線【第128回】


ここが違う!TruthのSTEM教育①
― 社会的構成主義を実現する独自カリキュラムと指導 ―


 2020年から小学校でプログラミングが必修になることを受け、雨後の筍のように同種の教室が増えてきています。そのような状況の中、2000年からSTEM教育(科学・技術・工学・数学教育)を実践している当アカデミーが依然として他の教室と一線を画す特長はたくさんあります。

 その中で最も重要なのは、「社会的構成主義」という教育理論を実現している点です。現在世界の子供たちが求められている学力は、OECDが実施する国際的な学習到達度調査PISA=ProgrammeforInternationalStudentAssessment)が求める学力、いわゆる「PISA型学力」であることは周知の事実となっています。その育成に最も有効とされる教育が、PISAにおいて学力世界一を誇ったフィンランドの教育です。そして、フィンランド教育を世界一に導いたのが「社会的構成主義」と言わます。一言で言うと、「知識は固定的に教え込まれるべきものではなく、他者との協働の中で構成されていくと考える教育哲学」です。

 砕いてお話すると、「構成主義」とは、教師が一方的に知識を与えるのではなく、「学習者としての子供たちが自らの活動を通して自分自身で知識を構築し獲得できるようなものでなければならない」とする考え方です。これに「LeaningbyMaking(作ることで学ぶ)」という主張を加えたのが、マサチューセッツ工科大学メディアラボの創設者の一人、人工知能の研究者としても広く知られるシーモア・パパートが唱える教育理論「コンストラクショニズム」。パパートは、「デバグの効用」や「推論・実験・検証という正しい学びのサイクル」を唱え、プログラミング教育・ロボット教育の元祖であり、プログラミングソフトScratchの源やLEGOMindstorms®のアイデアを生み出しました。「社会的構成主義」とは、これを分断された個人が行うのではなく「他者との関わりで学ぶ」、すなわち、他の学習者と意見を交換したり刺激し合ったりしながら、その協働の中で知恵や知識を高め、自らの力で目標を達成させる、という考え方なのです。ここでは、教育者の役割はteacher(ティーチャー)やinstructor(インストラクター)として知識を与えることではなく、facilitator(ファシリテーター・促進者)やmentor(メンター・良き助言者)として学習者たちの活動を目標に向かって正しく進めるように導くことになります。

 「21世紀型スキル」を育成するには、プログラミング教育やロボット教育は不可欠です。しかし、ICTスキルの育成にだけ軸足を置いては、単なる教科の学習と何ら変わりはありません。創造力・イノベーション・批判的思考・問題解決・意思決定・学びの学習・メタ認知(認知プロセスに関する知識)・コミュニケーション・コラボレーション(チームワーク)・地域と国際社会での市民性等を含む「21世型スキル」やPISA型学力をも育成するには、「社会的構成主義」が避けては通れないと確信しています。そのため、既存のカリキュラムでは実現できないので、パイオニアとして、全カリキュラムと授業案、ワークシートをオリジナルで作成し、他にない指導を十数年にわたって実践し続けているのです。

 お蔭様で、Truthの授業を見学したり指導者養成講座を受講したりした学校の先生や教育関係者からは、「理論と実践が完璧に一致している」と評価をいただいています。また、教室での活動を拡大して行うNPO法人科学技術教育ネットワーク(略称NEST)では、ICTを活用した教育実践事例のコンテスト「ICT夢コンテスト」でも、「ICTを活用して社会的構成主義を実現する活動」として認められ、3年連続CEC奨励賞を受賞しています。

 Truthには、21世紀に求められる新しい教育があります。

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳

トゥルース・アカデミーの理念
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2018年3月14日水曜日

トゥルースの視線【第127回】

高き目標を掲げよ!
~ Truthがロボットコンテストに参加する意味 ~

 最近の体験授業の際に、ごくたまに「Truthのロボット・サイエンスに入ったら、ロボコンに出なければならないのですか?」というご質問をいただきます。Truthの授業が専門的すぎると思われる方や、「勝敗を決めるコンテストに参加するよりも、楽に楽しくロボット製作やプログラミングを学ばせたい」と思われる方がいらっしゃるようです。Truthの生徒たちは現在、世界的なロボットコンテスト「ロボカップジュニア」や「ロボレーブ」、国内大会の「宇宙エレベーターロボット競技会」に出場しています。特に「ロボカップジュニア」では、地区予選(ノード大会)から始まって、関東ブロック大会、ジャパンオープン、世界大会と長期にわたる活動になる場合もあります。では、なぜ私たちは、時には苦しい思いをするかもしれないロボットコンテストに参加しているのでしょうか?

 ロボットコンテストにはそれぞれの競技のルールがあり、ルールを順守しながら課題を達成しなければなりません。ルールは世界の子供たちに向けての共通問題であり、各自がその問題に対して自分なりの回答を示す必要があります。その過程で様々なことを学び、自分の頭で考え、試行錯誤する、真の学習の在り方を身につけられます。また、ロボットコンテストは2名以上のチームで参加しなければならないので、自分だけが良ければいいというのではなく、チームメンバーと密にコミュニケーションを取ってチームワークを形成し、「チームのために自分は何ができるか? 何をすべきか?」を考えて行動しなければなりません。科学技術やプログラミング以外にも、社会に出てから必要とされる資質を身につけられると確信しています。



 ロボカップジュニアの開会式でもこれまで何度も述べてきましたが、「ロボットコンテストは、これまでの学習の成果を発表する場であり、教室の外で同じ志を持つ仲間との交流を通じての学びの場である」と、私は考えています。競技やコミュニケーション、他チームの作成したプレゼンテーション・ポスターを読むことを通じて、学びを深化させ発展させていく場です。教室から始まって、東京、関東・日本・世界と学習の場が広がっていきます。それだけでなく、子供たちが将来大人になって社会に出たとき、○○年のジャパンオープンに出たよ、○○年の世界大会に出たよ、というだけで、日本中に世界中に人的ネットワークを手にすることができるのです。

 ロボカップジュニアのルールには、「行動規範」の「精神」の項目に、『大切なのは「勝ち負け」ではなく、ロボカップジュニアの活動や経験を通して「どれだけ多くのことを学.ぶか」である』と記されています。その通りです。しかし一方で、元プロ野球選手の松井秀喜氏が言っているように、「負けることよりも勝つことの方が多くのことを学べる」というのも真実です。最初から「負けてもいいや」と諦めて臨むより、「絶対に勝つんだ!」という思いで臨んだ方が、学ぶことが多いに決まっています。子供たちには、高い目標を掲げ、自己の可能性が無限であることを認識し、その目標に向かって自らが責任を持ち誠実な努力を行うことを体得してもらいたい、と願っています。

 このような考えから、ロボット・サイエンスでは、ロボットコンテストに参加することを前提としたカリキュラム編成になっています。「分からないから何でも先生に聞けばいい」という安易に答えを求めるのではなく、主体的にどんな問題でも取り組み、先生からヒントやアドバイスをもらったり、自分でいろいろ調べたりして、自力で問題を解決できるように育って欲しいと思っています。Truthのロボット・サイエンスの講師は皆、小~高校生時代にロボット・コンテストに参加し、活躍していた者ばかりですので、競技やロボット開発、プログラミングに精通しています。また、開発の楽しみや苦しさも分かっています。競技で勝った時の喜びも負けた時の悔しさも分かっています。彼らが次の世代を育てるために後輩指導に当たってくれています。これが、Truthの代々伝わる文化、伝統となっているのです。


高き目標を掲げよ! 学習とは自らとの闘いであり、学力とは自らが生きてきた軌跡である。 
トゥルース・アカデミー


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2018年2月15日木曜日

トゥルースの視線【第126回】

第13回競基弘賞授賞式に出席して
~ 若きロボット研究者の遺志をつないでいく 〜


 去る1/16(火)神戸市ふたば学舎(神戸市立地域人材支援センター)にて、「夢は見るものではなく、実現するものだ」という、NPO法人国際レスキューシステム研究機構(IRS)会長・田所諭氏(東北大学教授)の力強い言葉で、「第13回競基弘(きそい・もとひろ)賞」授賞式は始まりました。

「ふたば学舎」は、1929年二葉尋常小学校としてその歴史をスタートさせ、1995年阪神大震災の際は構内に避難所を設置、2008年に小学校としての歴史に幕を閉じ、現在は「ふたば学舎」として市民の地域活動の拠点となっています。周辺被災地の記憶を中心に、阪神・淡路大震災の記憶と教訓を次世代に伝えるための震災体験学習なども実施しています。その1階に競基弘賞を主催するNPO法人国際レスキューシステム研究機構(略称IRS/会長:田所諭 東北大学教授、副会長: 松野文俊 京都大学教授)が事務局を置いています。

竸基弘賞は、1995年1月17日に阪神淡路大震災で倒壊したアパートの下敷きになり23歳の若さでなくなった、当時神戸大学大学院の博士前期課程1年生であった竸基弘氏にちなんで、レスキューシステムの研究開発に顕著な貢献のあった原則として40歳未満の若手の研究者、技術者を表彰し、研究開発を奨励することを目的とした賞です。この授賞式には、競基弘氏のご母堂、叔父様も出席なさり、当時競基弘氏を指導していたIRS副会長・松野文俊氏(京都大学教授)から震災当日の様子やできごと、訃報の知らせ、遺体発見の状況、葬儀の様子など、身につまされるような当事者の実体験が淡々と静かな言葉で語られました。


今回授賞式に参加したのは、昨年3月ロボカップジュニア・ジャパンオープン中津川大会で、レスキューLineのTruthチーム「Integrated Circuit(インテグレーテッド・サーキット)」(金廣理央・西澤英志・矢頭華蓮)が、「第十三回競基弘賞奨励賞・ロボカップジュニアIRS賞」を受賞したためです。平日なので3人とも出席できず、指導してきた講師の持田峻佑、メンターの畝本涼も参加できなかったので、私が代理出席した次第です。ロボカップジュニアIRS賞の受賞理由は、「周辺環境をより正確に把握するためのセンシングをLEGOとArduinoと異なるシステムを組み合わせて実現すると共に、構造的にも、直進安定性、全体の重量バランス、コンパクトなパッケージを両立させる設計に取り組んでいる。一方、被災者救済に結束バンドを使用するなど、アナログ/デジタルとの融合も視野にいれた工夫も取り入れており、システム全体として、シンプルでかつ、高い次元でのバランス取りを目指した設計に挑戦している取り組みを高く評価した」というものです。栄誉ある賞をいただいて、本人たちも指導した講師たちも光栄に感じています。奨励賞は、「レスキューロボットコンテスト奨励賞」に近畿大学ロボット研究会『レスキューHOT君』、「レスキュー工学奨励賞」には東北大学大学院の藤田政弘氏『房状ジャミング膜グリッパ機構』が受賞しました。


大賞である「第13回競基弘学術業績賞」は、橋本健二氏(早稲田大学高等研究所准教授)の『多様な移動方式が可能な災害対応脚型ロボットに関する研究』に贈られました。授与式の後、受賞記念講演がありましたが、その最後に研究に協力してくれた方々への謝辞があり、映し出されたプレゼンには、なんどTruth講師の名村圭佑の名前が!?幼稚園の年中から通い、ロボカップジュニアのジャパンオープンや世界大会にも出場、Truthで後輩指導ながらモンゴルの高専にもロボットを教えに行った名村君の名前が!レゴが好きで、ロボットが好きで、生徒として講師として18年間Truthに通っていた名村君が、研究室は大変だと言っていたものの、このような意義ある研究に携わっていることを知り、心より嬉しく感じました。

今回の「Integrated Circuit」のロボット開発が栄誉ある賞に輝き、先輩の名村君が最前線のロボット開発に携わっていることを考えると、やはりTruthにはロボット教育の歴史と実績、受け継がれる伝統があることを改めて実感し、万感の思いで帰京の途に就きました。

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2018年1月1日月曜日

トゥルースの視線【第125回】

2018年新年のご挨拶
~ 新たな技術革新の時代に ―加速化する第4次産業革命 ~


大晦日に初雪が降るのは130年ぶりという東京。2018年は穏やかな元旦を迎えました。明けましておめでとうございます。今年はどんな年になるのでしょうか? 

仮想通貨を物品やサービスへの支払い手段として初めて認める法律が国内で施行されるなど、「仮想通貨元年」と呼ばれた2017年とあって、年末年始の新聞は「ビットコイン」などの仮想通貨の台頭を報じています。「e通貨 現金を超える」(日経新聞)、「ビットコイン狂騒曲 買いが買いを呼ぶ 20倍以上高騰」(毎日新聞)、「仮想通貨長者 把握へ」(朝日新聞)…。昨年1月1ビットコイン=10万円前後から12月には一時200万円以上に高騰。2009年の誕生からは2000万倍に上昇しました。「億り人」と呼ばれる1億円以上稼いだ投資家も続出しているそうです。携帯電話を使って店舗での支払や個人間の送金も可能です。各国も無籍国の仮想通貨に負けてはならないと、独自の法定デジタル通貨の発行を検討し研究を進めているとのこと。1800年代から続く通貨の常識が今変わろうとしているようです。

このビットコインを支えるのが「ブロックチェーン」と呼ばれる技術。「ブロックチェーンとは分散型データベースを使った技術のことで、P2P型ネットワーク内で資産や取引履歴の記録を蓄積する仕組み。要は公開帳簿であり、そこでは誰が何を所有していて、誰が何を取引したのかが見られます。取引を暗号化して保護し、これが積み重なるうちに取引履歴がデータの塊であるブロックに閉じ込められ、続いてブロック同士が暗号でつながれて保護されるという仕組みです。これでネットワーク全ての取引を記録した、変更や改ざんが不可能な帳簿ができ上がります この帳簿が ネットワーク内の全てのコンピューターに複製されます」(政治家学者ベティーナ・ウォーバーグ『ブロックチェーンが経済にもたらす劇的な変化とは(TED)』)。P2P(Peer to Peer)は、サーバーを利用せず、対等のクライアント同士が直接データをやり取りする点が、従来の「クライアント/サーバー型」とは異なります。P2Pのメリットは、サーバーが必要ないため、柔軟なネットワークを構築できる点にあるとのこと。ウォーバーグは、経済活動を円滑化する役目を持つ銀行や政府といった中央集約型の機関の必要性をブロックチェーンが一掃し、古くからある商業や金融取引のモデルが、分散型で、情報透明性が高く、自立型の価値交換システムへと進化を遂げるだろう、と述べています。

また、未来学者ドン・タプスコットは、『ブロックチェーンはいかにお金と経済を変えるか(TED) 』において、機関によって集中管理されることにはハッキングされる危険性があることを説き、情報のインターネットは富を生み出したが、繁栄は共有されず社会的不平等が拡大し、これが様々な問題の核にあることを指摘します。ブロックチェーンという「価値のインターネット」を介して、1つの巨大な世界的分散台帳が何百万というコンピューター上で運営されていて誰にでも使え、お金から楽曲まであらゆる資産が強力な仲介者なしに、保持・移動・取引・交換・管理することができる。これよって、富の生成を民主化してもっと多くの人が経済に関わり、公正な富の分配が可能となることを、いくつかの実例を挙げて論じています。

ブロックチェーンは新しいネットワークになりそうです。これに加え、2020年を目標に次世代通信規格「第5世代(5G)」の研究開発が進んでいます。現行の4Gの100倍の実行速度、通信の遅れがわずか0.001秒。元旦の日経新聞では、5G時代を見込んでソニーが開発している「ニューコンセプトカート」という、ハンドルもフロントガラスもない車を紹介。東京の営業所から1600km離れた沖縄県にある車をゲームコントローラーで遠隔運転する実験を行っているそうです。大容量の映像をほとんど遅れることがなく伝達できる5Gだから実現できるのです。

さらに、ハード面での開発ももちろん進められています。それが、「未来の頭脳」とも呼ばれている「量子コンピューター」。量子力学の世界では、0と1が同時に存在できる「重ね合わせ」という現象が起きるのが特徴です。「0でもあり、1でもある」という状態で計算できます。ビット数が増えるほど飛躍的に計算でき、その速さは2のn乗倍(nはビット数)にもなります。カナダ企業が2011年、世界で初めて「Dウエーブ」という量子コンピューターを商品化し、スパコンの1億倍の速さだそうです。米IBMや米グーグルも開発を進めています。量子コンピューターが注目されているのは、人工知能の開発に欠かせない「機械学習」や「ディープラーニング」の計算処理の実態である「組み合わせ最適化問題」を高速に解ける可能性があるからだそうです。現在、各国がその開発にしのぎを削っているとのこと。

これらの技術が、AI(人口知能)がロボットに利用されることにより、さらに第4次産業革命は加速度的に進んでいくように思われます。実にワクワクする時代になりそうです。その一方で、このような時代に適合する教育とは何か?「デジタル・ネイティブ」と呼ばれる今の子供たちが将来において生き抜いていくために必要な教育とは何か?という模索も真剣に行わなければなりません。

2000年から新しい時代をリードしてきた当アカデミーは、子供たちに今後必要とされる能力を育てる教育を常に研究しながら、新しい教育に挑戦していきたいと存じます。

本年もよろしくお願いいたします。

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